表装には基本の決まった「型」が存在します。必ずしも全くその通りにしなければならないというわけではありませんが、長い伝統の中で培われてきた「表装として美しく見える形、落ち着く形」として現在も受け継がれています。その歴史は古く、名称は地方や表具師により異なります。
表装の種類に関わらず、サイズや本紙(作品)の雰囲気、飾るお部屋のサイズなどに合わせて布地はもちろん寸法もオーダーメイドにて仕立てさせて頂きます。
仏様や観音様を描いた作品や「南無阿弥陀仏」といった書などに用いられる表装様式です。
仏表装の中でも三段階あり、「真の真」が最も丁寧な形で「一文字」と呼ばれる上下の箇所が本紙のまわりにぐるりと周る仕立てになります。上下のみに一文字がつくものが「真の行」、一文字が全くないものは「真の草」と呼ばれています。
最もオーソドックスな表装として全国で親しまれており、飯田地方では「大和表装」と呼ばれていますが、「三段表装」と呼ぶ地域もあります。昔は「本表装」とも呼ばれていました。
仏表装と同じく大和表装にも三段階あり、一文字が本紙の上下左右につく仕立て、上下のみの仕立て、なし、と変化を持たせることができます。
大和表装の柱の寸法が細い(約1~1.3cm)表装です。スリムなサイズで小さな茶室などに向いており、特に茶人に好まれてきました。
表装は、表に出る「本紙(作品)」と各パーツに裁断された布地の裏に「肌裏紙」「中裏紙」「総裏紙」という3種類の紙を順番に貼りこむことで構成されています。文榮堂ではそれぞれの素材にもこだわり、上質で長持ちする表装を目指しています。
本紙(作品)や周りに配置される布地の裏に直接貼られる「肌裏」と呼ばれる紙は、透き通るように白く表に影響しないものを使用しています。
産地は表装の種類や大きさなどにより選びますが、那須こうぞ、美濃和紙など、表装に適した日本国内の職人による手すきの和紙を使います。こうぞ100%ですので、本紙や布地にやさしく、よく馴染み、長持ちします。
充分に乾かした肌裏の上に、さらにもう一層「中裏」と呼ばれる紙を貼ります。さらに本紙や布地をピンとのばし、湿気による影響や、作品を制作する過程で起こった縮みやうねりを直し補強する重要な役割をもった中裏には、奈良県吉野ですかれた和紙を使用しています。
石粉が配分されておますので、貼りこむと本紙や布地がより丈夫に、しっかりとします。
最も裏面に来る紙です。丈夫で風合いのある、やはり手すきのこうぞ100%和紙を使用いたします。宇陀地方で漉かれているので「宇陀紙」とも呼ばれます。総裏を打つ際には「くい裂き」という重に裂いた総裏紙の繊維同士を重ねて繋ぎあわせる事によってつなぎ目を目立たなくさせる技法を使用しますので、繊維のしっかりした和紙が用いられます。
特厚、厚口、中厚口…など、作品の大きさなどによって厚さを選びます。
生地は京都の表装生地を取り扱う問屋から仕入れています。
「一文字」「総縁」「中廻」のそれぞれの箇所に合った布地を数十種類づつご用意しております。
金糸を折りこんだ絢爛なものから、味わい深い昔ながらの柄、新しい模様まで、お好みや作品の雰囲気に合うものをお選びいただけます。
※お客様ご自身で布をご用意いただくことも可能です。ほどんどのものは対応可能ですが、表装に向かない布もありますのでご相談ください。
軸棒に使う木にも心を配ります。
本当に信頼のおける良い木を使わないと、年月が経つにつれ木からアクが染みだしてきてしまいます。掛け軸は丸めて保管するものですので、軸棒からアクがでてしまうと作品全てに及び、台無しになってしまいます。吉野杉ではそのような事はありませんので軸棒にはかならず上質な吉野杉を使用いたします。
他にもいろいろなパーツを使用いたしますが、信頼のおける国内の問屋さんから仕入れたものです。
例えば軸棒の両端につける軸先も国内の職人さんが加工したものを使用しています。デザインもバリエーションがありお選びいただけます。巻いた時にしばる紐なども京都の紐を使用しています。